■ 借金だって「生き金」!

銭湯の経営を引き継ぐ。これ廃業した形のまま再開できれば、廃業→すぐに再開は可能。ただ廃業した姿のまま再開できる事って少ない。

理由はシンプルで、これは廃業した原因と直結している。銭湯が廃業する理由はいろんな人が様々述べてるけど、突き詰めればひとつ。

ズバリ、儲かってないからなのだ。よく聞く廃業の2大要因。後継者不足と施設老朽化もこれで説明がつく。

「後継者がいない」 ➡ 儲かってれば家族・親族が後継者になってくれる
「施設・設備の老朽化」 ➡ 儲かってれば投資して設備は新しくなる

客数が減り、売上が下がり、利益も下がり、キャッシュが減っていく。一定の水準を下回ると資金ショート。こうなると銭湯経営どころじゃなくなる。「ない袖はふれず。ただ去り行くのみ」で休業・廃業となってしまうのだ

銭湯は小規模事業とはいえ、市場原理・市場競争の影響はやっぱある。廃業するところもあれば、逆に勝ち残るところもある。
廃業するのは、客数、売上、資金力など総合力がエリア内で弱い方の銭湯。

総合力が劣ってたから廃業した銭湯。引き継いでそのまま即座に再開したらどうなるか。
そう、自分たちより強い数多の銭湯がいる土俵に、残りHP「1」みたいな状態で再び上がるようなものなのだ。

「お、また土俵に戻ってきたか、よしきた。
ハッケヨーイ、残った! ドン! 再び『死』みたいな。」

儲かってないから廃業した銭湯。儲からない形のまま蘇生させてはいけない。丸腰じゃあダメなんだ。

だから銭湯を再開させるときは、苦しくとも多少時間かかっても、廃業時のままではなく健全な状況に戻す必要がある。

健全な状態に戻すには、資金投入が伴う。わが社の場合、まぁ借金することになる。ただこの借金、壊れた設備を直すとか、仕方なく借りるとか、そんなネガティブなものじゃあない。

廃業で世間から消滅するかもしれなかった銭湯を活性化し、再び地域とともに長い歴史を歩むための積極的な借金だ。少々いやらしい表現をすれば客数売上を伸ばし、利益キャッシュを生み続けるためでもある。

お金には「死に金」と「生き金」ってのがある。未来へつながらないお金は「死に金」。だが、こういう生きるための借金、言い換えればワクワク未来のための借金は、金の中でも「生き金」だ。

生き金のための借金。銭湯というものには投入する価値はあると思う。きっと何倍もの生き残るパワーとなって帰ってくるはず(ニヤリ)

真神 友太郎(まがみ ゆうたろう)

■ 風呂を増やすのに本当に一千万円もいるのか?

東京品川区の西小山「東京浴場」。
廃業してからもう半年以上たつ。

経営引き継ぐことを名乗り出て、契約合意に至ったのは2019年11月。
あれから2か月。

再開はまだ先でやっとリニューアル工事開始の目途がたったところ。
ホントに時間がかかってる。

設備解明&故障修理。リニューアル内容の実現性の議論。東京浴場以外の銭湯のテコ入れや
次の銭湯引き継ぎの交渉などなど、時間かかる理由はつきないよ・・・。

そんな中、再開を託されたメンバー達は毎日コツコツと進めてくれてる。
彼ら彼女らも他銭湯の仕事と同時進行で、負担は大きい中で頑張ってくれてる。

一番時間かかってる理由のひとつに、営業再開にあたり浴場内の風呂をひとつふたつ増やそうとしているってのがある。

その構想、概算見積をとったらスゴい金額。ろ過機、ポンプ、チラー、温度管理、給湯設備とかなんだかんだで1500万円かかるって。

工事は他の箇所もたくさんあってこの見積だと工事総額は2500万円とかになってしまうのだ。
営業再開後はしばらく赤字が続くだろうし、何より資金繰りに影響が出る。

なんだかね~。やっぱり飲めない。変態的経営術とか言ってられなくなるし、もっと低予算でできる方法があるはず。

ポンプ20万、ろ過機50万など数十万円のパーツが4~5個程度組み合わさったら、
いきなり総工事費1000万円とかになるお風呂工事ってダメだ。

商売の規模の割に金かかり過ぎ。
他の方法を見出さなきゃ。


■設計さんと風呂工事の打合せ中

僕の好きなコスプレイヤー達は、あれだけクオリティと再現性の高さ、時にえちえちな雰囲気も醸し出しながら、知恵と工夫で想像よりはるかに低予算でコスプレを頑張ってる。

お風呂関係でいえば、東日本大震災時に手作り風呂を急遽作って被災地に行ったことがある。
自治体の許可ももらい、何よりかかった工事費は80万円だ。

サウナだって作ろうとしたら1000万円近くかかるって言われたことあるけど、テントサウナの出現で20万円で楽しめるようになった。しかも「持ち運べるサウナ」という革新的要素も引っさげてる。

設備の技術者じゃないし、お風呂工事の設計や工事だって素人で詳しい事よくわからないけど
とりあえず今回の東京浴場再開では言い続ける。

「150万円で新しい浴槽をつくる!」ってね。
そこに僕らの目指す変態的銭湯経営術の奥義とかが生まれるはずなのだ(決意)

真神 友太郎(まがみ ゆうたろう)

■文化を守るなら。

ここんとこ毎回コミケにサークル参加してる。
「ベンチャー企業の男子ども(略してベンチャー男子)」って銭湯ギャグのマンガ
描いて頒布してるんだけど、同時に銭湯関連のコスプレもやってる。

今夏は「銭湯のペンキ絵」になり、年末は「銭湯のカラン(洗い場)」になった。
こういうのメチャクチャ大事な活動と思ってる。

「銭湯は日本の大事な文化」という言葉を時々聞く。
文化を守りたいなら、文化を進化させ拡げる活動が必要。

銭湯というお風呂商売に、東京都の消費者が1年間に使ってくれるお金(市場規模)って
コミケのたった数日の市場規模にも及ばない!

銭湯の市場規模は、あまりに小さい!
これじゃあ守りたい文化も守れない!

ニコニコ温泉という会社の『銭湯経営術』では、自分の店だけ儲かる段階はマダマダ雑魚的なレベル。
銭湯という市場に、ヒト・モノ・金・情報、そして時間が、もっともっと流入されることを目指している。

これは普通の活動ではちょっと難しい。時間がかかりすぎる。
必要ならまだまだ変わったこと、変態的と思われる事もサッサとやらねばならないのだよ。

今のところ「アホなことやってるなぁ」みたいな意見をもらう事もあるけど、
真面目にやってるので気にならない(笑)。

真神 友太郎(まがみ ゆうたろう)